経営
さて、農業研修編に戻る前に一つ、注意事項をお知らせしておきます。
 
それは、巷で人気の『青年就農給付金』について。
二年間の研修中と、その後就農してから五年間に年間150万円ずつもらえる……というアレですね。
これは実際の所どうなのか?……ということについて、実体験者から感想をお知らせしておきます。
 
ええ……「やめておいた方がいい!」です。
 
何故かというと。
まずこの助成金の要件として、見落とされがちですが、
 
・研修後、一年以内に就農しなければ返還
・その後、最低五年間続けなければ返還
・その間は他の仕事で稼いではいけない
 
という縛りがあります。
……これが実は曲者!
 
率直に言って、この制度は『入口』を作るものなのですが、『出口』は自分で作らなければなりません。
……がしかし!
前の記事でも書いていたように、現在の農業界は『供給過多』でパイを食い合っている状態。
再三書いているように、条件のいい農地は取り合いになっています。
そして逆に、悪条件の農地は押し付け合いに。
 
こうした状況から考えても、『受け皿がまだ整っていないのに、ガンガン上からお湯を注いでる』状態……。
しかし、もう助成金は受け取ってしまい、研修は終わってしまった。
さあ、一年以内に就農しないと借金持ちだぞ!
 
これがまず一つ目のハードル。
何故か私自身よりも周りの人たちのほうがやたらと騒いで、あーしろこーしろとちょっかいをかけてきてます。……めんどくさいったらありゃしない。
でも、この人達が見落としているのが次の部分。
 
『五年間続けなければ返還』という条件。
 
周りの人々にはいつも言ってるのですが、「遠い場所、条件の悪い圃場ならいくらでも手に入る。重要なのは『好条件の営農環境を手に入れること』だ」と言うことなんです。
 
タイムリミットに慌てて適当な農地を手に入れたとしても、そんな場所で儲けられるとは思いません。
我々新規就農者は、既存農家の方々とは違って、様々なハンデを抱えて就農するわけですから。
 
ただでさえハンデのない方々がやって行けてないのに、それよりも条件の悪い場所で上手くいくはずがない……!
それぐらいの気持ちでいるわけです。
 
さらに言えば、他に仕事ができない状況で年間150万円貰ったとしても、そこから経費や投資を行って、もしも今年のように自然災害で栽培がコケたりした場合、そこで一気にジエンドです……!
 
「150万あれば、一年間やっていけるだろう」という考えで設定した金額なのかもしれませんが、事業として考えた場合には、いささか不安の残る額です。
さらに、不正受給対策として考えられているであろう、『兼業の禁止』という制約が、さらに『保険をかけられない』というリスクを増やしているわけですね……。
 
と、このような状況が考えられるので、よっぽど条件のいい環境に就農する場合でなければ、逆効果になる可能性が非常に高いです。
 
普通に信頼できる農業法人で稼いでお金を貯めて、そのまま就農したほうがいいだろうと思います。
もしくは、事前にきちんと受け入れ側と交渉し、就農環境まですり合わせをしてから研修を開始するとか……。
ともかく、これからどうなるかわからない就農という状況において、それほどでもない金額のために行動に制約をかけられて、柔軟性を失うことはあまり利点とは思えません。
そしてそれによって、『借金』というリスクを得るのであれば尚更……。
大学進学に関しての、奨学金における問題点とよく似ているかもしれません。
 
私の場合、この『信頼できる農業法人』という部分でつまづいてしまったので、慌てて駆け込んでこの状態……というわけですw
……まんまと受け入れ状況が整っていませんでしたね。
 
まあでも、持ち前の運の良さで、何とかなりそうな活路が拓けてきましたので、これまでに書いている通り、これから色々と仕掛けていきたいと思っています。
 
 
○ 担い手が利用する面積が今後10年間で全農地面積の8割となるよう農地集積を推進
○ 青年新規就農者を毎年2万人定着させ、10年後に40代以下の農業従事者を約40万人に拡大
 
という目標が掲げられているようですが、現場の状況とは少なからずギャップがあると考えていた方が良いかと思います。
 
ただ、今の政府の方向性である『大規模農家の推進』と、新規就農者たちの方向性である『田舎暮らし・農的暮らし』のようなギャップがまだまだ多くあるのではないかと考えていますので、これからどうやってそのギャップを埋めていくのか……?が、これからの農業界の課題となるのかと思います。
 
就農プランナーの役割は、こうした部分を現場からの視点で改善していくことにあるんですね。
人材育成が、やはり次世代の農業界には必要となりそうです。