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  • 2014.02.12

代表の長澤さん。花を傷つけないよう繊細な作業です。


ファレノクリスタル長沢 長澤陽祐(Yosuke Nagasawa)
1980年10月生まれ。早逝した実父に代わり一家の大黒柱として新たな農業を志し、7年前に胡蝶蘭栽培をゼロからスタートしました。
もともと家庭用の野菜苗などを栽培していた敷地は、農家として決して広くはありませんが、そのぶん一株一株に長澤さん自身がしっかり手間をかける品質管理が自慢です。




発芽から半年



10か月~1年



2年以上経過。丈夫な株に育ち、芽が出てきました。




2年半かけて、いよいよ開花です。


「発芽から出荷できる状態になるまで、およそ2年半かかります。」大輪の花が鈴なりに咲くためには、丈夫な株を育てなければなりません。そのために「株がしっかり栄養を蓄えるよう、温度、光、水の管理を常に徹底します。機械制御はなかなか難しいので、やはり自分の目で見て、手で触れて『良い塩梅』を見極めていきます。」
 ― 手間がかかりますね。「まるで子育てです(笑)」
大規模になると効率は上がりますが、人の目が届きにくくなります。

「胡蝶蘭と言えば、会社や店舗の開業などの贈答イメージが一般的ですね。でも欧米では個人が気軽に楽しめる花なんです。」と長澤さん。品質の高い花を個人で長く楽しんでもらえるよう、当初より直販に注力してきました。今ではご近所の方や青梅方面に遊びに来た観光客が気軽に立ち寄れる、まさに「お花畑」です。






でも、胡蝶蘭は高価なイメージが・・・

【長澤さんに聞く、胡蝶蘭の目利きについて】
胡蝶蘭の価格は、花の数、ボリューム、立ち姿のきれいさによって決まってきます。1株あたりの花、つぼみの数が多いほど値段が高くなります。
花のきれいさも重要です。シミや汚れがないものほど良いとされます。
自分で選ぶときは、株の根本、葉がしっかり肉厚なものを選んでください。
葉は陳列の際にはワックスをかけて艶出ししているので、色目だけではなく触って確かめましょう。

では、確かめにくい通販の場合は?
私どもでは、目利きが難しい通販のために品質保証を確約します。





【自宅での管理方法】
 ― 胡蝶蘭というと、翌年花を咲かせるのが難しいとよく聞きます。
実は最も手がかからない花の一つです。とにかく放っておくこと。咲いてる間は1週間〜10日、花が無くなったら10日〜2週間に一度、鉢の水苔(ミズゴケ)の表面だけではなく中まで完全に乾いたら、たっぷり水を与えてください。ついつい水をあげすぎてしまったり、逆に水の量が少ないことで上手くいかないケースが多いようです。人間もそうですが、過保護も育児放棄も駄目なんですね(笑)
また、置く場所は直射日光を避けて、冬は温かい部屋、夏は風通しの良い涼しい所に置いてください。
 


胡蝶蘭の花言葉は『幸せが飛んでくる』
新たな市場開拓への情熱


従来の法人向けギフトだけではなく、大切な人への贈り物として、セルフユースとしても楽しんでもらいたいんです。そんな新しい市場を切り開ければ良いですね。
ファレノクリスタル長沢では、小ぶりな低価格のものやアウトレットもあります。是非気軽にお問合せください。見学も大歓迎です。
 


【価格と品質保証(例)】 


・胡蝶蘭(白)税込15,000円(本体13,000円+包装材・送料2,000円)
高さ80~90cm ※品質ギャランティー:1株あたり11輪以上保証




・胡蝶蘭(ピンク)税込15,000円(本体13,000円+包装材・送料2,000円)
高さ80~90cm ※品質ギャランティー:1株あたり12輪以上保証




・胡蝶蘭(黄ミディ)税込13,000円(本体11,000円+包装材・送料2,000円)
高さ約70cm ※品質ギャランティー:1株あたり10輪以上保証




・胡蝶蘭1株(赤リップ)税込6,000円(本体4,500円+包装材・送料1,500円)
高さ50~60cm ※品質ギャランティー:1株あたり7輪以上保証






レポート
  • 2013.10.16

	現在、ザックザックの姉妹サイト「アグリッティ」では、今回ご紹介するあっぷりんご園さんのりんごを期間限定、数量限定で発売しています。
水木さんこだわりのりんごをぜひご賞味ください!


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あっぷりんご園のりんご畑。この日は5月初旬の暑い日でした。
 
青森の特産品といって何が思い浮かぶでしょうか。さまざまな海産物や農産品がある中でもおそらく真っ先に思い浮かぶのはりんごではないかと思います。
 
青森の津軽平野、中でも弘前市のあたりには、緩やかな丘の上一面にりんご畑が延々と連なり広がっています。まさにりんごの大産地、というイメージです。
 
取材に行ったのはちょうど弘前城の桜が満開の時期。りんごの生育シーズンの始まりの頃です。りんご畑ではそのつぼみはふっくらとふくらみ、今にもほころびそうな夏日でした。
 
「冬はすごく寒かったのに急に暑くなったりしてりんごの樹もついていかないよ」と笑うのは、あっぷりんご園の水木たけるさんと、栽培を手がけるお父さん。こんな年は珍しいと汗をかきながら作業をしているところにお邪魔しました。
 

	
今にもほころびそうなりんごの花のつぼみは赤みを帯びています。
 
りんごというと秋冬が旬というのはご存じかと思いますが、1年中スーパーや果物店の冷蔵ケースに並んでいることに気づく人も多いと思います。けれども、なぜこんなことが可能なのか考えたことがある人は実際のところ、あまりいないのではないかと思います。
 
実はこれは、生産者が熟すよりも早い段階で「早もぎ」をして冷蔵庫で1年中出荷できるように冷蔵保存をしているからなのです。つまり、まだ味が完全に乗りきらない状態で収穫し、追熟させていく方法です。
 
けれどもこうした生産者ばかりではありません。旬の時期の美味しいうちだけ生果の出荷をし、それ以外は出荷していない農家さんもいます。水木さんもそのひとりです。
 
 
すべてを美味しく食べきってもらうための工夫
 

	
あっぷりんご園のりんごは3キロから購入可。これは紅玉。
 
水木さんのりんごは私も何度か取り寄せをしているのですが、届くりんごは、自宅近くの果物店などで買うものとは全く違い、ジューシーで心地のいい食感。酸味と甘みのバランスがよく、品種ごとの違いがよく分かります。
 
送ってくれるのも3キロの小さな箱から。通常であれば食べきれないほどの大きな箱で送られてくることがりんごは多いので、ずっと取り寄せするのを躊躇していたのですが、この大きさであれば冷蔵庫に入れて保存しておける、という分量で送られてくるのもありがたいところです。
 
「品種によってはりんごは実が緩みやすいので、やっぱり冷蔵保存して欲しいし、家庭でそうして保存できる範囲は決まっています。
それなら管理できる量で送ったものを最後まで美味しく食べて欲しいですから。」
 
実際、密かな人気品種でもあるジョナゴールドは「こんなにぱりぱりしてたっけ?」と思うくらい歯触りがよく、近所で買うものとは全くの別物だと思えるようなものです。
 
「やっぱりどの品種もピンポイントでこの時期が美味しい、っていうのがありますから。その時期に食べてもらえた方が喜んでもらえますしね。」
 
出荷のタイミングももちろん大事なのですが、まずこのりんごが、どんな風に育てられているのか、その点を見せていただきました。
 
 
美味しいりんごが育つための秘密
 

	
畑の隅でじっくり時間をかけて作られる自家製のぼかし肥
 
案内されたのは畑の脇にある小さな小屋。その中にはビニール袋が並んでいます。その中から出てきたのは、以前他の果樹農家さんなどで“購入している”と言われたものとそっくりでした。私が「ぼかし肥」と教えてもらったものです。
 
「そう、ぼかしです。うちは剪定した枝とか、伐採した木をチッパー(枝などを粉砕する機械)にかけて細かくしてから、魚カスや炭などを入れて2年間寝かせます。そうすることで自家製のぼかし肥ができあがるんですが、これがとてもりんごにいい。花もりんごの花は白いイメージがあると思いますが、これをやるようになってから花がピンクがかって、桜に近い色になりました。花びらもきらきらしている感じ。でもこのやり方は別に新しい方法ではなくて、古い昔からある方法なんです。」
 
大概の場合、剪定した枝などは、燃やしてしまうか、産業廃棄物として扱われることが多いのですが、なぜぼかし肥を自家製するようになったのでしょうか。
 
「実は剪定した枝や樹齢を迎えて伐採した樹をチッパーにかけて袋に入れても、入りきらない分があったりするんですよ。で、もう面倒くさいからって1本の木の下にまいてしまったんです。そのあと肥料をあげたりいろいろしてたら、その樹だけがすごく成長がよくて、あ、これはいいんじゃないか? ってことになって。偶然の産物なんですよね。でもおかげでうちの畑では無駄になるものはありません。」
 
偶然の産物とはいえ、2年間という時間や手間のかかる作業を自らすることで無駄やコストを省くことが、美味しくて価格も手ごろなりんごに繋がっているということでもあるのです。
 

	
チッパーにかけた枝の上に立つ水木さんのお父さん
 
そもそも、りんごの栽培ってどんな風に行われているのか、たぶん知らない人が多いのではないかと思います。水木さんに話を聞くまでは、他の果樹のことは知っていたにしても、私もそのひとりだったと言えます。
 
春のこの時期の剪定、その後の受粉作業、病害虫の影響を防ぐための防除。さまざまな作業を経て、私たちの手元に届くりんご。実際の所はどんな感じなのかを教えてもらいました。
 
「受粉作業は去年花からとったおしべだけを乾燥させたものを品種ごとに冷蔵保管しておいて、それに石松子(せきしょうし)の粉を混ぜたものを使って受粉させていきます。品種が違うと実が落ちてしまったり変形したりと、形になりにくいので、それを人為的にしていくんです。」
 
よくテレビなどで見かける“受粉作業”というのがこれに当たるのですが、これはめしべとおしべをひとつの花の中で受粉させるということだとばかり思っていたので驚きです。
 
りんごにはいろいろな品種もあります。新しく現れる品種もあれば、淘汰されていく品種もあるわけですが、どういったことからこうして品種が増えていったのでしょうか。
 
「もともとは、人間がコントロールしやすいように作っているとは言えるんです。でも、それだけ人為的な作物だとも言えます。例えば動物で言えば純血種より雑種の方が強かったりするように、りんごも例外ではないんです。人為的に作った分、人が手をかけないと死んでしまうとも言える。そうすると、今度は自分たちも生きていけなくなる。りんごはそんな存在なんですよ。そういう意味では、自分たちが育てているのか、育てさせられているのか分からなくなるときがあります。“りんごの召使い”みたいなね。」
 
 
いいりんごの“条件”とそこに詰まった知恵
 
水木たけるさん。あっぷりんご園の若き主。
 
りんごの生育期にはいろいろと手がかかります。私たちが秋冬に、大きくて綺麗な色の、そしてなにより美味しいりんごには出会うための作業。そのためには適量の農薬も使います。それは実をたわわにならせるだけではなく、りんごの樹や実の健康を守ってあげるためでもあるのです。
 
「大きい、色や形が綺麗、美味しいというのはりんごの場合最低条件。それをクリアするためにみんな頑張っていると言えます。でも農薬代ってバカにならないですから、そういう意味でも適材適所で、減らせるところは減らす。それが作る側にも買う側にも一番良いでしょう?」
 
農薬というと“怖いもの”というイメージがあると思います。なので、“自然農”のようなものも現れています。“奇跡のりんご”に代表されるようなものです。
 
「りんごは人為的な作物でもあるから、あの方法だと生果で出荷できるものは少なくなってしまうし、病害虫にやられればどうしても味が落ちることになってしまいます。それは他の果樹と変わらないこと。たくさんの人に美味しいものを食べてもらうために、適切に農薬を使うことは必要なことだと思っています。だって、食べ物があるから人は生きていけるわけですから。それに、本当に農薬が危険で影響が大きいものだとするのなら、このあたりに年寄りはいないし、たくさんある樹齢100年を超えるようなりんごの樹なんて、今頃ないですよ。」
 
農業が進歩しているのと同様に、農薬も当然のことながら、より害の少ないものへと進化しているということもあげられます。
 
農業というのは本来人為的なもの。人が生きていくために畑を耕し、作物を植えて出来たものです。食べられなかった原種を品種改良して食べられるようにしたりと、さまざまな世代の知恵が詰まっています。その知恵を私たちはいただいているともいえるのです。
 
 
新たな“産業”への展望
 
黄色い札が下がった樹は、りんごのオーナー制度をしているもの。
 
水木さんのりんご園では、生果で出荷されないものもあります。それがとても人気のあるりんごジュースになります。濃厚でりんごの味がぎゅっと詰まったような味わいの美味しいものです。
 
「でもこのあたりの人達は、加工をすることをいやがるんです。やっぱり生果でいいものが出せてなんぼ、というところがあって、加工用にりんごを作ったりするのは恥ずかしいことと考えていることが多いんです。」
 
あんなに美味しいりんごジュースが出来ても?それに、シードル工房も青森市に出来たりしてその機運も高まっているのに? と感じる方もいるのではないでしょうか。
 
「実際、そうした話はこの1年くらいでこのあたりでも出るようになってきました。けれども元々文化的にないものを最初から創り上げることになる。そうした意味でも産業として成り立つようにしていくのは大変なことです。加工用には加工用のためのりんご作りがありますから。そのための作り込みや作り替えというのは大変な作業になっていきます。でも、そうしたことはまだこの地域では行われていないのが現状です。生果で出荷することがメインですから、作り方の方向性も変わってくるんです。生果で出せないものを他の製品に加工して、という考え方ではだめなんです。」
 
 
「美味しい」を届ける、幸せの青い鳥
 
りんごジュースの製造ライン。とてもシンプルで小さなものです。
 
こういうことは気づいた人がやるしかないんですよね、と水木さんは笑う。最後に「見たらきっと笑いますよ」と言いながらジュースを作っている現場を見せてくださいました。
 
「全部ひとりでやることを考えて作りました。機械も本来のものを揃えるとすごく高額になってしまうので、いろんなものを組み合わせて工夫したり、オークションで落札したりね(笑)。」
 
1日に詰められるジュースの量は300本程度。1本1本手で詰めて殺菌し、ラベルも1枚ずつ手で貼っています。あれだけの美味しいジュース、何か製造工程に秘密があるのかと思っていましたが、そうではなかったのです。そこにあったのは、とてもシンプルで、考えられたひとりで製造できるライン。今までいろいろな製造現場を見てきましたが、ここまですっきりしたものは初めて見たと言っても過言でないくらいです。その代わりすごく手がかけられているのが分かります。
 
「最終的に、りんごも、ジュースも、いいものを作ることが何より大事。そしてそれを一度口にしてもらえたら、次はなんとない瞬間にまたそれが食べたい、飲みたい、と思ってもらえる。販売のことはまだまだ分からないことがたくさんあります。その提案をこれからしていくことが生産現場を作っていくことにも繋がって行くんです。」
 
いいものを作り、消費者が満足すること。それは難しいことをいろいろと考えることではなくて、実のところとてもシンプルなことなのかもしれません。けれども世の中に溢れるいろいろな情報に翻弄され、なぜかそんな簡単なことに行き着かないでいることが多いのではないでしょうか。
 
私たちの“美味しくて、うれしい”の向こう側にあるものは、生産者たちの“いいものを作る努力”。それに気づいたとき、手元に届くりんごやジュース達は、よりいっそう特別なものへと変わります。

今日も、明日も、明後日も。水木さんたちは「美味しい」という、幸せの青い鳥を私たちに届けるため、絶え間ない努力を重ねていってくれることでしょう。
 
インタビュー
  • 2013.05.21



正しさを疑うことと、日本の農業の未来――いま大きな話題となっている『黙示』の著者、真山仁氏の特別インタビューが実現しました!(聞き手・叶内)

 
 
 
叶内「非常に面白く拝読いたしました。農業の話が興味深いだけではなく、情報をいかに伝えるか、情報を信じるとはどういうことかについても、考えさせられました。」


真山「『黙示』は日本の農業をテーマにした小説ですが、おっしゃる通り農業のことだけでなく、他にも訴えたいテーマがあります。小説は、ノンフィクションと違い、登場人物の行動や考えを通して、いくつかの生き方を疑似体験することができます。その過程で、社会がそれまでと違った視点で見えてくる。自分だったらどう生きるのかを考えながら読むことも、小説の楽しみ方のひとつだと思います。」


叶内「私は代田という養蜂家の発言を通して、マスコミのあり方を考えさせられました。情報の伝え方一つで、騒ぎが大きくなっていきますね。」


真山「食の安全の話は、情報に振り回されるから不安になる、ということもあります。では、情報は誰から発信されているのか。一つはマスコミです。でも今は、マスコミの情報は信じないという人がいる。今回の作品にも、マスコミの情報は信用しないけれど、自分で得た情報は正しいと思いこんでいる人が登場します」


叶内「土屋宏美さんですね。」


真山「はい。しかし、マスコミが発信している情報も、個人が発信している情報も、情報という意味では変らないはずです。それなのに、正しさを恣意的に信じているわけです。東日本大震災以来、こういう人が増えていて、非常に危うい状態だと思います。正しさとは何か、悪とされているものを単純に排除していいのかということです。」


叶内「農薬の是非にもつながる問題ですね」


真山「養蜂家の代田は、『農薬の恐怖は放射能以上だ』と発言してしまうのですが、ある種の農薬が蜂に被害を与えることは間違いない。だからと言って、単純に善悪を二分化して考えられるのか。農薬メーカーや国が悪いといって済む時代なのか。そうではないと思います。むしろ、複雑化した現代は被害者であると同時に加害者にもなりうる時代です。二項対立で物事を考えるのは、やめた方がいい。
3・11以降、現代社会がいかに危険な要素を包摂しているかがあらわになりました。その危険を知ることは怖いけれども、知らないままでは済まされない。国に全て任せてしまえばいいという時代は終わり、何がリスクなのかを各個人がきちんと知って考えるべき世の中になっていると思います。」


叶内「私たち消費者が試されているということですね。一般人というと、先程もお話に出た土屋宏美が消費者を代表した人物だと感じました。小説の中の人なのに、”嫌い”という強い感情が生まれるくらいリアルでした。」


真山「今回、多くの方から土屋宏美について感想をいただくのですが、ある女性の読者は、自分は同じことをしない自信があるのか、と考えてしまったと言っていました。情報の取り方や、彼女が主張する正しさには、危うさがある。そこに、原発問題にもつながる大きな問題が潜んでいると考えています。」



叶内「ところで、今回の『黙示』はどんな経緯で生まれたんですか」


真山「農薬に含まれているネオニコチノイドの話や、農業の輸出の話、養蜂家の代田や農水官僚の秋田などは、数年前に出した『プライド』という短編集の中でも登場します。ですが、今回の長編の準備に一年半かかりました。」


叶内「そんなに時間をかけられたのですね。」


真山「その間に震災があり、余計に時間がかかりました。実は、蜂も飼ったんですよ。」


叶内「実際にですか?!」


真山「実際は養蜂家に委託していましたが、農薬散布時期に一週間観察をしました。農薬の影響なのか、巣箱に戻れなくなった蜂もいました。農薬の危険性は確かに存在します。その危うさを、元々心の中で書きたいと思っていた食の安全や、強い農業を作るといったテーマと合わせて作品にしたいと考えたのです。」


叶内「そもそも農業をテーマに取り上げたきっかけはなんだったのでしょうか?」


真山「もともと、私が小説家としてデビューしたのは、すでに日本が低迷を始め、日本は終わった、ジャパンナッシングと言われ始めた頃でした。社会的な事象に重きをおいた小説を書きたいと思っていたのですが、日本はもう沈んでいくだけだ、と書くのは嫌だった。そうではなく、未来の希望を書きたかった。といっても、楽観的なことだけを書くという意味ではありません。今の状態を直視し、そこからどうやって乗り越えていくべきなのか、道のりを示すことが大事です。そのテーマの一つとして、早い頃から農業を、もう一度見直すべきじゃないかと考えていたんです。
 誰しも農業はきわめて重要で不可欠なものと理解していますが、そのわりには無関心です。多くの人にとって食べ物を選ぶうえで大切なのは、値段、味、そして見た目。あとは、産地です。」


叶内「ええ、私もつい気にしてしまいます」


真山「ですが、ある産地で作られた食物が、実際にどうやって作られているのかについてはほとんど関心が払われていない。本来はそれこそがとても大事なことのはずなのに、イメージだけで判断してしまって、それで事足れりとしています。」


叶内「確かに、考えが浅いように思いますね。」


真山「他者から与えられるだけの情報や、一面的な見方を、疑ってみる。そこが非常に重要だと思います。農家のあり方についても、同じでしょう。国から言われた通りに米作りをやっていれば十分という時代は終わりました。従来のやり方を疑い、新しいことに挑戦しなければ、道は開けてこない。様々な業界で成果を出している人は、従来のやり方にプラスアルファのアクションを起こしている人や、全く違う発想で動いている人です。農業だって同じはずです。そして、新しいことをやろうと頑張っている人を支援する。これが真っ当なありかただと思います。」


叶内「その新しい発想の一つとして、農産物の積極的な輸出やビジネス化という流れがあるのですね。」


真山「いま、日本を取り巻く農業ビジネスの構図が変貌しつつあります。国内産業としての面だけではなく、アジアの富裕層を視野に入れると、アジアで勝負できる部分は何かが見えてきます。日本の強みは何か。香港、シンガポール、上海、ベトナム、タイといった国や都市には、高くても日本の食料を買う消費者が現れています。香港の富裕層は、中国大陸から500円で買えるキャベツより、日本の一個1000円のキャベツを選ぶのです。彼らが求める最大のポイントは安全性です。」


叶内「味ではなくて、ですか?」


真山「味は結局、嗜好の問題になってしまう。しかし、今や安全をカネで買うというのは、世界共通のルールです。日本にはそういう発想が希薄です。日本では、国が安全にカネを払ってくれていましたからね。」


叶内「なるほど。」


真山「ただ、将来にわたっても、日本人は今まで同様に安全を享受できるのか。食の問題を追究していると、そこに疑問符をつけざるを得ません。」


叶内「どういうことでしょうか?」


真山「一つ例を挙げてみます。年収が下がり始めると、多くの人が、まず削るのは食費でしょう。高い食材ではなく、少しでも安い食材へ、安い店へと人は流れます。しかし、そこで提供されるのは、海外から輸入された安価な食材であることが多い。そうなると今よりも、安全性が低くなることを覚悟しなければならない。」


叶内「難しい選択ですね」


真山「GMO(genetically modified organism=遺伝子組み換え作物)に関しても、安全性とコストという面からも真剣に考えたほうがいい。感覚的に何となく怖いというだけでは、本当のリスクが見えてこないと思います。」


叶内「今回の『黙示』でも、GMOを忌避するのではなく、避けて通れないものとして、きちんと向き合おうとする姿が描かれていて、まさに食の安全と日本の農業の未来を考えるうえで、力強い読後感でした。他にも、非常に多角的な視点を提示されていると思うのですが、農産物の輸出とビジネス化のメリットについて、あらためてお考えをお聞かせください。」


真山「逆に、食糧の輸入が止まったらどうなるかを考えてみるとよいと思います。日本がいつまでも海外から食糧が買えるとは限りません。もし、国内に小麦が入ってこなくなったら、パンやパスタの値段は跳ね上がります。その場合は、いくらパン好きの人でも、ご飯を食べるでしょう。あるいは、米粉のパンを食べるかもしれない。他にも様々な食品が登場するはずです。こうした状況で重要なのは、米作りの力です。現在のように、減反しておいていざとなったら田んぼを全て復活させればいい、という簡単なことではない。そうではなく、輸出ビジネスを強化することで、農業の働き手を確保しておき、万一危機的な状況になったら、その生産力を国内に回せばいいのです。」


叶内「農産物を輸出することで、農業の基礎体力を確保しておくということなんですね。」


真山「農業をビジネス化すれば、そこに投資が生まれます。例えば、輸出に打って出ている農家に投資するとなれば、インセンティブが出て、産業として育っていきます。これが、最近言われる六次化の目的でしょう。農業ファンドを立ち上げて投資してもらうというのは、今までの農協の仕組みとは次元が異なるのです。その中で新たなビジネスが生まれれば、日本の農業の未来も見えてくると思います。」


叶内「お話をお聞きしていると、日本の農業の現状を乗り越えて、新しい世界が開けてきそうな明るい予感がしてきました。このたびは、お忙しいなか時間を割いてくださり、本当にありがとうございました」




■真山 仁(まやま じん)
1962年大阪府生まれ。小説家。新聞記者、フリーライターを経て、2004年『ハゲタカ』でデビュー。2007年に『ハゲタカ』『ハゲタカⅡ』を原作とするNHK土曜ドラマが放映され話題になる。地熱発電をテーマにした『マグマ』は2012年にWOWOWでドラマ化された。
最新作は、日本の食と農業に斬り込んだ『黙示』(2013年2月刊、新潮社)。その他の著書に、中国での原発建設を描いた『ベイジン』、短篇集『プライド』、3.11後の政治を舞台にした『コラプティオ』など。
http://www.mayamajin.jp/

 


■叶内 文子(かのうち あやこ)
経済キャスター。
ラジオ短波(現ラジオNIKKEI)を経て1999年フリーに。
「マーケットプレス」「和島英樹のウィークエンド・ストック」などに出演中。証券アナリストでもある。
山形県出身 











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  • 2012.07.11

〜農業を取り入れた暮らしと天職と感じるほどの“大好きな仕事”を両立させた生き方 ー それが半農半X〜

蔦の絡まるカフェはジュース工場の跡地を改装したもの


旅する移動カフェ+参加型オーガニックカフェ

阪急十三駅の商店街の外れにある『カフェスロー大阪』は、都会にありながらゆっくり静かに落ち着ける場所。
 
共同オーナーの二人は高校時代の同級生。カフェを運営したいけれどコーヒーが嫌いな赤澤さん。コーヒーが好きでコーヒー屋がしたかった見島さん。二人の興味が一致して、知識や情報を補い合えたことから、オーガニックコーヒーの移動カフェ『カフェピトゥ』が誕生しました。
 
その後、現在の場所にカフェスロー大阪をオープンし、キッチンスタッフに藤丸さんが加わったことでフードメニューが充実していきました。


農業へのきっかけは“お客様からの質問”

フードメニューにはオーガニック野菜を使用しています。お店でだす野菜たちは、近郊の畑のものや、自分たちの手で育てたもの。人気メニュー『大地の恵プレート』は、旬のオーガニック野菜がふんだんに使われていて、調理方法も凝っています。
 
お肉を食材に使わないとコクに欠けてしまったり、お腹いっぱいにならなかったりするイメージもありますが、料理を一度口にしたら、その先入観を覆してくれます。
 
野菜たちについて、お客さんから質問をもらうことも多く、それに対してちゃんと答えられるようにと、次第に農業への関心が高まりました。その想いが、縁を呼び寄せるように、畑との繋がりができていきます。

レンズ豆とナッツのベジバーグ・菊芋と種先菜のソテー・大根と菊芋のピクルスなど。自家製味噌のみそ汁の香ばしさと甘さも人気。


植物の枝葉のように広がる畑活動



現在、カフェスロー大阪と繋がっている畑は、能勢、丹波、枚方、川西の4カ所、初めての畑活動は能勢でした。カフェの大家さんの知人が所有する畑の一部を 使わせてもらえることになったのがきっかけ。カフェに集まる友人やボランティア・スタッフと、畑活動をスタートさせます。
 
最初に栽培したのは地這いキュウリ。キュウリの支柱の立て方がわからずに悩んでいたところ、地面を這って育つ地這いキュウリのことを知り栽培することを決 定。そのほか、トマト、ナス、ソラマメ、ゴーヤなどを育てました。キュウリやナスは、早速、夏フェスのメニューにも使ったそうです。


3メートルにもなることもある菊芋

現在、能勢の畑は菊芋畑になっています。菊芋は、年に数回程度の畑通いでも勝手に育つ、ワイルドで元気な芋。シャキシャキした食感も新鮮で、血糖値を下げ る効果があるという研究結果から、注目されているそうです。カフェスロー大阪では、この春、菊芋チップスを商品化して店頭で販売しました。


菊芋が宝探しのようにゴロゴロいっぱい

丹波の畑との関わりは『森の夢プロジェクト』の一貫。生物多様性の研究をしている森の都研究所と、カフェスロー大阪が共同で関わる里山再生プロジェクトで す。森の夢プロジェクトは、里山全体を活かすあらゆる方法を考え、企画していくという壮大なテーマを持って活動しています。
 
その活動の一部が畑活動です。最初は、田畑に侵入してくる竹を切る作業から始まりました。協力して活動することで、自然に関するさまざまな知恵を森の都研究所の方から教えてもらい、カフェスロー大阪のスタッフは労働力を提供する補完関係にあるそうです。

■森の都研究所
http://ameblo.jp/forestcity/

枚方の畑は、都会に住む人のための週末型農カルチャースクール『ハタケスクール』に、グループ参加することで関わっています。グループごとに、いくつかの畝を割り当てられ、プロの農家の方に育て方を教わっているそうです。
 
ハタケスクール発起人の谷町・空庭さんと知り合いだったことからこの活動へ参加することに。このスクールで学んだことを、別の畑で実際に活かす流れが生ま れます。川西の畑は、これから関わっていくところだそうです。また、カフェスロー大阪と契約している農家さんの畑での単発の農作業も年に数回あります。

■谷町・空庭さん
http://www.soraniwa.net/


畑素人のお客様と畑をつなげる『チャレンジ畑部』も

ハタケスクールへの参加をきっかけに、カフェのお客さんが畑活動に参加できる形を考えて『チャレンジ畑部』を発足。部員になれば、月数回の活動日に参加できるそうです。
 
何を植えるのかみんなで相談し、部員だけが見られるクローズドのSNSで活動報告をシェアできるそうです。今年は、枚方ではナス、えごま、トマト、ハーブ など、丹波では黒豆や田植えに挑戦します。取材後、筆者もチャレンジ畑部に入ったので、今後の活動もレポートしてみたいと思います。


半農半X Q&A     

Q.半農半Xの内容はなんですか?
A.農:オーガニックカフェ
  X:『チャレンジ畑部』

Q.農業に興味を持ったきっかけは?
A.カフェのお客様に野菜について質問されたときに答えたい。
  もともと野菜づくりに興味があった。

Q.なぜ半農というスタイルを選んだ理由は?
A.カフェ運営をしながら少しでも農に関われるスタイルを選んだ。

Q.何を育てていますか?
A.菊芋・きゅうり・ゴマ・黒豆・ハーブなどいろいろ

Q.農業はどのように覚えましたか?
A.畑スクールや契約農家さんなど

Q.半農半Xのメリット・デメリットは?
A.畑が遠いのでマメに畑に行けないこと。
  チャレンジ畑部の部員がほとんど社会人のため
  参加人数が毎回予測できず少ない場合は大変なことに!

Q.一日の暮らしの流れ&一年の暮らしの流れについて
A.毎日・毎年いろいろ。
  チャレンジ畑部の活動は月3~4回。
  手のかからない作物しか植えていない畑は年に数回。

Q.今の拠点は出身地?それともIターン先?
A.スタッフ全員が関西出身。


赤澤さん(左):以前に暮らしていた集合住宅の空き地に、大家さんに許可を得て野菜を育てていた。興味を持ったら、とにかくまずやってみたくなる。

藤丸さん(中):和・洋・中で修行したビーガン(玉子や魚も食べないベジタリアン)料理人。心身を作る料理の大切さや、おいしい幸せを人に伝えたい。

見島さん(右):本当は虫が嫌いだそう。食べられない野菜もあるのだとか。それでも、とにかく野菜を育てるのがおもしろくて仕方ない。森を守る活動も。



移動カフェ“よしお号”のシンボルよしおくん


■カフェDATA

Cafe Slow Osaka/カフェスロー大阪
<参加型オーガニックカフェ×コミュニティスペース>

〒532-0028 大阪府大阪市淀川区十三元今里2-5-17
カフェ : 火~金 14時~20時
レンタルスペース : 火~日 10時~21時
tel : 06-7503-7392 (電話受付:火~金 14時~20時)
fax : 050-3488-5196
mail : info@cafeslow-osaka.com

Cafe Slow Osaka/カフェスロー大阪 http://cafeslow-osaka.com/
旅する移動オーガニックカフェ/Cafe Pitwu http://cafepitwu.livedoor.biz/


■畑部DATA

チャレンジ畑部

*部費(年間費)
新規:9000円(一般)/4800円(学生)
更新:6000円(一般)/3600円(学生)
※体験入部は交通費実費のみでOK。

*入会時期
年中受付(一年ごとに更新)
※更新時期は各自異なる。

*活動日
週末に月数回(部員に連絡)

*活動場所
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文&写真:藤原聖津子


 

  • 2012.04.27


この何年かで流行し始めた高糖度ミニトマト。品種もどんどん増えつつけ、さまざまなものが出回っています。

それぞれに味や香りの特徴もあるのですが、その中でもひときわ目を引いたのが「まるしょうトマト」というカラフルなミニトマトです。

なんと、トマトの糖度が13度!
通常の高糖度フルーツトマトは7〜8度なので、どれくらい甘いのだろう? と調べてみたところ、なんと桃と同じ糖度。もはや果物に近い甘さを持つトマトなのです。


カラフルなトマトのアソートが目を惹きます。パッケージやパッキンにまでこだわりが。

これを作っているのが、山梨県笛吹市にある「まるしょう農園」さん。なんでも、野菜ソムリエの方がフィルム栽培という技術を使って育てているのだそう。初めて聞く栽培法がどんなものなのかを探るべく、農園にお伺いしました。


この日は関東では珍しい大雪の日でした。

お伺いして案内されたハウスは、なんと入り口で靴を脱いで入ります。中では専用の室内履きやスリッパなどを履いて入り、手などを消毒してから作業をするという徹底された衛生管理を行っています。私も手の消毒をして中にお邪魔しました。

ハウスの中には、狭い樹幹で仕立てられたトマトの苗がぎっしり。「今年は冷害が出ているので少し寂しいのですが」と見せていただいたハウスには、畝ごとに別々の品種が植えられています。


フィルム栽培ってどんなもの?



フィルム栽培とは何なのか、水耕栽培とはどう違うのか、社長の神宮司渉さんにお伺いしました。

「まだ導入しているところは少ない技術なのですが、水耕栽培とは違うんです。土の下に特殊なフィルムを敷いて、その下にはこんな感じで養液をしませたものを敷いてあります。触ってみますか?」

フィルムの下には白いシートが敷いてあり、触ってみるとしっとりと濡れています。土は本当に極薄い層という感じで、これであのトマトが育つんだ、と思うほど。水分を少なくしてトマトの苗をいじめることで濃厚な甘さが出るのだそうです。

また、畝の端には、小さなプラスティックの箱が置いてあります。

「病気が出たときに特定しやすいよう、畝ごとにはさみなどの器具も消毒して使っています。どこから出ているかわかれば被害も最小ですみますからね。」


畝ごとに細心の注意を払うことでウイルスの発生を防いでいます。

ミニトマトの苗間は一般的に言われているものより狭く、それが誘引されて天井のほうへ伸びています。寒波で量は少ないとは言え、マイクロトマトを始めさまざまな品種の綺麗な実が育っていました。寒波の影響で、一番糖度の高い「天使の甘粒」は不作気味とのことでしたが中の「フルティカ」などの品種も糖度は7〜8度と高く、栽培環境も手伝ってか、とても透明感のあるみずみずしい味わいです。


生まれ故郷の農業活性化に役立ちたい


社長の神宮司渉さん。

社長の神宮司渉さんは、野菜ソムリエの資格を持っています。笛吹市出身で、仙台で農業関連の仕事をなさっていたそうですが、地元農業の活性化をしたいと思い立ち独立。現在5人で農園を運営しています。普段はその5人で、栽培管理からパッケージや箱詰め、出荷までを行っています。

「このあたりでは日本でも耕作放棄地がとても多いところなんです。御坂はもともと巨峰やぶどうで有名な場所でもあるんですが、バラの苗でも大きな産地です(笛吹市の市花はバラ)。バラは最近海外から安い輸入苗が入ってくるようになったことや、高齢化が進んでやめてしまう方が増えたんです。なので、実はこのハウスもバラのハウスを転用したものなんです。」

なぜ他の栽培方法ではなく、フィルム栽培でミニトマトを育てようと考えたのか。それはこれからを担う若手の農業者に、もっと「気軽に」農業に入ってきて欲しいと考えたからだそうです。


たくさんの実をつけるマイクロトマト。

「このあたりの若い人たちは、東京に出て会社で働く人が多いです。農業は土で汚れて綺麗じゃないし、お金にならないというような感覚で見ていて、親が農家であっても継がないケースが多い。けれどもこうした栽培方法で、ある程度安定した生産量でトマトを出荷でき、値段もちゃんとつくものが作れたら、収入も安定しますし、いきなり土を耕して作るところからというよりも、就農しやすいと思ったんです。農地を放棄してそのままにするのではなく、新たな形の農業を始めることで地域の活性化が出来たらすごくいいと思うんです。」

そう語る神宮司さん自身が、このまるしょう農園を始めたのはなんと2年前。まだご自身も「新規就農組」であると言えますが、生産方法や経営の採算について考え、モデルを作ることで、産地を形成していきたいというところまで考えていらっしゃいます。


最終的には観光農地のように


天使の甘粒。1種類のみでの販売は現在取り扱いがありません。

ちなみにまるしょう農園さんの中でも一番糖度が高い「天使の甘粒」を、私自身が教えている料理のレッスンクラスでドライトマトにしたのですが、低温のオーブンでじっくりと水分を抜いていかないと、トマトそのものが焦げてしまうくらいの糖度の高さでした。できあがったものはトマトと言うより、プラムのような味わい。

「生で食べるのはもちろんなんですが、それだけではなく、加工品を作ったり、トマトを育てていく中で出てくる、出荷すると楽しいだろうな、というものも含めて、いろいろなものを形にしていけたらと思いますし、最終的には観光農園のようにトマトを摘んでもらえるような場所が作れたらいいなと思っています。それにはまだまだ試行錯誤もあるとは思いますが、こんな形でやれるんだ、ということを若い人には見て欲しいですね。」

まるしょう農園のトマトは夏場を除くシーズンに、アソートパックで販売しています。近隣であればアマノパークス竜王・岡島などが主な販売店。神宮司さんの農業活性化への想いと共に美味しくいただきたいですね。


まるしょう農園
〒406-0801
山梨県笛吹市御坂町成田355-2
Tel:055-232-5259
http://www.marunou.com/


文&写真: 井出玲子