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  • 2012.04.27


この何年かで流行し始めた高糖度ミニトマト。品種もどんどん増えつつけ、さまざまなものが出回っています。

それぞれに味や香りの特徴もあるのですが、その中でもひときわ目を引いたのが「まるしょうトマト」というカラフルなミニトマトです。

なんと、トマトの糖度が13度!
通常の高糖度フルーツトマトは7〜8度なので、どれくらい甘いのだろう? と調べてみたところ、なんと桃と同じ糖度。もはや果物に近い甘さを持つトマトなのです。


カラフルなトマトのアソートが目を惹きます。パッケージやパッキンにまでこだわりが。

これを作っているのが、山梨県笛吹市にある「まるしょう農園」さん。なんでも、野菜ソムリエの方がフィルム栽培という技術を使って育てているのだそう。初めて聞く栽培法がどんなものなのかを探るべく、農園にお伺いしました。


この日は関東では珍しい大雪の日でした。

お伺いして案内されたハウスは、なんと入り口で靴を脱いで入ります。中では専用の室内履きやスリッパなどを履いて入り、手などを消毒してから作業をするという徹底された衛生管理を行っています。私も手の消毒をして中にお邪魔しました。

ハウスの中には、狭い樹幹で仕立てられたトマトの苗がぎっしり。「今年は冷害が出ているので少し寂しいのですが」と見せていただいたハウスには、畝ごとに別々の品種が植えられています。


フィルム栽培ってどんなもの?



フィルム栽培とは何なのか、水耕栽培とはどう違うのか、社長の神宮司渉さんにお伺いしました。

「まだ導入しているところは少ない技術なのですが、水耕栽培とは違うんです。土の下に特殊なフィルムを敷いて、その下にはこんな感じで養液をしませたものを敷いてあります。触ってみますか?」

フィルムの下には白いシートが敷いてあり、触ってみるとしっとりと濡れています。土は本当に極薄い層という感じで、これであのトマトが育つんだ、と思うほど。水分を少なくしてトマトの苗をいじめることで濃厚な甘さが出るのだそうです。

また、畝の端には、小さなプラスティックの箱が置いてあります。

「病気が出たときに特定しやすいよう、畝ごとにはさみなどの器具も消毒して使っています。どこから出ているかわかれば被害も最小ですみますからね。」


畝ごとに細心の注意を払うことでウイルスの発生を防いでいます。

ミニトマトの苗間は一般的に言われているものより狭く、それが誘引されて天井のほうへ伸びています。寒波で量は少ないとは言え、マイクロトマトを始めさまざまな品種の綺麗な実が育っていました。寒波の影響で、一番糖度の高い「天使の甘粒」は不作気味とのことでしたが中の「フルティカ」などの品種も糖度は7〜8度と高く、栽培環境も手伝ってか、とても透明感のあるみずみずしい味わいです。


生まれ故郷の農業活性化に役立ちたい


社長の神宮司渉さん。

社長の神宮司渉さんは、野菜ソムリエの資格を持っています。笛吹市出身で、仙台で農業関連の仕事をなさっていたそうですが、地元農業の活性化をしたいと思い立ち独立。現在5人で農園を運営しています。普段はその5人で、栽培管理からパッケージや箱詰め、出荷までを行っています。

「このあたりでは日本でも耕作放棄地がとても多いところなんです。御坂はもともと巨峰やぶどうで有名な場所でもあるんですが、バラの苗でも大きな産地です(笛吹市の市花はバラ)。バラは最近海外から安い輸入苗が入ってくるようになったことや、高齢化が進んでやめてしまう方が増えたんです。なので、実はこのハウスもバラのハウスを転用したものなんです。」

なぜ他の栽培方法ではなく、フィルム栽培でミニトマトを育てようと考えたのか。それはこれからを担う若手の農業者に、もっと「気軽に」農業に入ってきて欲しいと考えたからだそうです。


たくさんの実をつけるマイクロトマト。

「このあたりの若い人たちは、東京に出て会社で働く人が多いです。農業は土で汚れて綺麗じゃないし、お金にならないというような感覚で見ていて、親が農家であっても継がないケースが多い。けれどもこうした栽培方法で、ある程度安定した生産量でトマトを出荷でき、値段もちゃんとつくものが作れたら、収入も安定しますし、いきなり土を耕して作るところからというよりも、就農しやすいと思ったんです。農地を放棄してそのままにするのではなく、新たな形の農業を始めることで地域の活性化が出来たらすごくいいと思うんです。」

そう語る神宮司さん自身が、このまるしょう農園を始めたのはなんと2年前。まだご自身も「新規就農組」であると言えますが、生産方法や経営の採算について考え、モデルを作ることで、産地を形成していきたいというところまで考えていらっしゃいます。


最終的には観光農地のように


天使の甘粒。1種類のみでの販売は現在取り扱いがありません。

ちなみにまるしょう農園さんの中でも一番糖度が高い「天使の甘粒」を、私自身が教えている料理のレッスンクラスでドライトマトにしたのですが、低温のオーブンでじっくりと水分を抜いていかないと、トマトそのものが焦げてしまうくらいの糖度の高さでした。できあがったものはトマトと言うより、プラムのような味わい。

「生で食べるのはもちろんなんですが、それだけではなく、加工品を作ったり、トマトを育てていく中で出てくる、出荷すると楽しいだろうな、というものも含めて、いろいろなものを形にしていけたらと思いますし、最終的には観光農園のようにトマトを摘んでもらえるような場所が作れたらいいなと思っています。それにはまだまだ試行錯誤もあるとは思いますが、こんな形でやれるんだ、ということを若い人には見て欲しいですね。」

まるしょう農園のトマトは夏場を除くシーズンに、アソートパックで販売しています。近隣であればアマノパークス竜王・岡島などが主な販売店。神宮司さんの農業活性化への想いと共に美味しくいただきたいですね。


まるしょう農園
〒406-0801
山梨県笛吹市御坂町成田355-2
Tel:055-232-5259
http://www.marunou.com/


文&写真: 井出玲子