HOME今週のZファーマーアグレッシブなZファーマーたち天下の清水白桃は岡山にあり!

今週のZファーマー

入江竜令さん

ファーマーDATA

名前: 入江竜令さん 桃ぶどう農家(岡山県)

農家っていうのは、商売人でもあるけど、まずは生産者じゃ。そのバランスが大切なんじゃろうな。

(text by 松田直子

仕事の仕組み

桃ぶどうなど生産する、JAなどを通してデパートなどに出荷される
出荷できるのは全体の4割程度
規格外の桃は親戚にあげたり地元へ行商することもある(これは、桃がもったいないから)

年間スケジュール

1月  桃・ぶどうの温室の土の堆肥搬入、中耕。ぶどう剪定
2月  マスカット(ぶどう)の加温準備。ボイラー点検(整備・清掃)
3月  マスカットの房の手入れ
4月  マスカットのまびき作業
5月  コールマン(ぶどう)のまびき作業
6月  各種ぶどうに予防薬散布(7~10日間隔で、2~3ヶ月間実施)
7-8月  桃とマスカットの収穫と出荷
9-10月  冷室マスカットの収穫と出荷
11-12月  コールマンの収穫と出荷

初期投資
星4つ
手間
星4つ
ギャンブル度
星3つ
難易度
星4つ

VOL.3「岡山の白桃」とは?

2008.12.02 Tue
桃畑は傾斜地にある。 −お中元のカタログを見ると、「清水白桃」以外は、たいてい「岡山の白桃」として売られている。そもそも「岡山の白桃」とは、どういうものなのだろう。

「『岡山の白桃』って一口にいうけど、実際には清水白桃以外にもほんまにいろんな種類がある」

−ふんふん、それなら、まず清水白桃ってそんなに別格なもの?

「本来の清水白桃っていうんは、ここ一宮の気候と山砂利層に最適なもんを、明治20年からの品種改良でこつこつ作り上げてきたわけじゃから。そりゃあおいしいよ。先人がこのへん一帯の山を開墾して、一大桃園を造成したわけじゃけど、ここの山砂利層っていうのは、ここの地区の山にしかない。ほら、そこの山が北限じゃわ。向こうの山行ったら、もう違う土になる。だから、発祥の地じゃからっていうだけじゃない。ここの地区で栽培された桃は、やっぱり県内でも一番の味覚があるって自負しとるし、マルイチ(○のなかに一)っていうブランドで出荷してもおる」

−限られた地区の生産者にしか許されない「マルイチ(○のなかに一)」の商標は、清水白桃の中でも最高のもの。

「うちで作っとるのは、他に「加納岩白桃」「紅清水白桃」「白麗」「白鳳」「白秋」「川中島」「夏子」「サクラ」「岡山夢白桃」...かな。全部少しずつ味も違うし、特徴がある。たとえば最近では白麗なんか、清水白桃に負けんくらいおいしい。あと、新しい品種じゃけど、岡山夢白桃もおいしいわ」

−白麗。実は私は、清水白桃よりこちらの方が好きである。清水白桃より、少し甘みが強い。皮をむいて切ると、真っ白な果肉の中央部が濃い紅色に染まっていて、見た目も本当に美しい。しかし、新しい品種というけれど、個人で品種改良までやっていたりはするのだろうか。

「いや、それはないなあ。農家が個人でやろうとしても、5年や10年はかかる。普段の作業もあるし、なかなかそこまで手が回らんわ。じゃから、登録済の新品種を購入して、早期改植していくっていうのが、まあ当面の考え方かな」

規格外の桃のゆくえ
−デパートに行くと、目の飛び出るような値段で売られている高級フルーツ(一個千円以上など)。宮崎のマンゴーだって、山形のさくらんぼだって、作ったものすべてがあの値段で売れるのなら、農家は今頃がっぽりもうかっているはずだ。
しかし、決してそうではない。特に白桃は、柔らかく傷つきやすい。しかしてその肌の美しさが身上でもある。あれほど手をかけて大切に育てても、規格に合うものばかりを作るのは、どんな名人でも難しい。それは悩みの種だ。

「ほんまに歩留りは悪いわ。1年以上かけて作っても、40%しか売り物にはならん。味は一緒でも、傷一つついたらもうあかん。そういう規格外をどうやってさばくか。それがやっぱり問題なんじゃ」

−40%!店頭に並ぶあの美しい白桃は、半分以下の確率で選ばれたものなのだ。では、残り60%はいったいどうなってしまうのか。
実は、昔はほとんど山に捨てに行っていたのだという。規格外の安いものが市場に流れると、高いものが売れなくなってしまう。涙を呑んでの苦渋の選択だ。

「だけど、手ぇかけて大事に作った果物じゃ。やっぱりできるだけ無駄にはしたくない。それに、近くに住んでるのに、白桃なんか食べたことない、いう人もぎょうさんおる。だから私の場合はなあ、いうたら『行商』に行く」

−...行商??

「そう。そりゃもう格安じゃから儲けなんかないようなもんじゃけど。直接売るから、そんなにいらん言う人には、ばら売りもできるじゃろ。缶ジュースだって一缶100円で売っとる。それなら白桃一個二個の方がどんだけ嬉しいか、言うて、年の人なんかはほんまに喜んでくれる。2日に一回でも3日に一回でもなんぼでも来て、言うてなあ。毎年楽しみに待っててくれる人もおる。そのへんには、儲けうんぬんじゃない、喜びややりがいが感じられるわな」

−デパートに並ぶ岡山産白桃。マンゴーほどではないものの、やはり一般庶民は迂闊に手が出せない。岡山県内でも、毎年白桃を口にできる人はいったいどれほどいるだろう。

「去年、社宅に行商行ったとき、若い家族が赴任してきとってな。『この値段で桃って食べられるんか』、いうてそりゃあびっくりされた。こんなおいしい桃、家で食べる用のもんじゃないと思うとった、言うてなあ。こんなにおいしいもんなら人にも送りたい、言うて、逆に進物用まで注文されたほどじゃわ。
でもな、その通りなんじゃ。桃は高いもんじゃっていうイメージばっかり先行しとる。あれは進物用じゃ、自分の家で食べるもんじゃないっていう先入観があって、なかなか食べてもらえん。でも、ほんまはそうじゃない。高いもん買うたからおいしいんじゃっていうんじゃない。流通の問題もあるしなあ、なかなか変えようがないんじゃけど...」

−確かにそうだ。自分で直接売るからこそ、採算ぎりぎりの値段で、多少不恰好でも安くておいしい桃が味わってもらえる。

「桃に限ったことじゃないと思うけどなあ、インターネットなんかで、素人が売ったり買ったりしよう思うたら、価格と写真しか見んじゃろ。そしたら、1玉何gって書いてても、糖度いくらって書いてても、実際の大きさやおいしさなんかわからんじゃろ。写真見たって、他のもんと並べて撮ってあるわけじゃないから比較のしようもないし、ようわからん。岡山県産っていうたって、岡山のどこかはわからん。保険の契約書と同じじゃわ。うわべだけ見て、贈った人は満足でも、実際のところはどうかわからんじゃろ。もちろん、インターネット販売を否定してるわけじゃないし、すべてが悪いとは言わんけどな、落とし穴はいっぱいあると思う。
ほんまにしよう思うたら、(桃の)顔見てもろうて、味見してもろうて、おいしかったら買うてくれっていう。なかなかそうばっかりはできんけどなあ、神戸くらいからじゃったら、毎年うちまで、進物用と自分用と買いに来てくれるお客さんもおるよ」

−日本全国...どころか海外でもどこからでも注文することができるインターネット販売は、生産者と消費者の距離を感じさせなくなった。しかし、距離が縮まったとは限らない。むしろ、本当のおいしさからは遠く離れてしまったとも言える。
ちなみに、規格外の桃、と言えば、姪である私の口にもいろんな形で入ってくる。生のまま、はもちろん、虫食いや傷みが激しいものは、白桃ジュースやコンポートが定番だ。

右は白桃ジュース。左は絶品!桃のコンポート。 白桃ジュースのつくり方はこんな塩梅。
冷たく冷やした白桃と、牛乳少々、お好みで砂糖、レモン汁をほんの少し入れてミキサーにかける!氷を浮かべたら、簡単おいしい夏休みのおやつの出来上がり。農作業の合間にも飲まれている。

桃のコンポート。写真のものは、料理上手な伯母につくってもらった。冷蔵で五日、冷凍しておけば一年はもつ、おいしい定番。

なお、重量180g以下の桃は、地元の缶詰工場、「角南(すなみ)製造所」に卸している。角南製造所は創業昭和10年、桃やぶどうの缶詰やジャムで有名な工場だ。清水白桃や白鳳などで作られた「桃缶」(桃のコンポート)は、東京を中心に全国のデパートやネットでも販売されている。


次のサラリーマンから桃農家になっての、喜びや楽しみ、そして苦労のドラマ。「天下の清水白桃は岡山にあり!」いよいよ最終回。
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今週のZファーマー

Zファーマーとは、自分で考え、工夫や発明を重ねて、クリエイティブな農業を営む農家のことです。

川部正巳さん

A.がっぽり型

川部正巳さん

滋賀県米原市

占いの人に聞いたら、土か火に関係する仕事が向いてるよって言われたんです。火といえば、消防士でしょ。でも、応募年齢過ぎててあかんかった(笑)。陶芸家、花火師、造園業とかいろいろ考えて、美味しいもの食べるの好きやし、農業がいいかなって思ったんですよね。

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