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今週のZファーマー

入江竜令さん

ファーマーDATA

名前: 入江竜令さん 桃ぶどう農家(岡山県)

農家っていうのは、商売人でもあるけど、まずは生産者じゃ。そのバランスが大切なんじゃろうな。

(text by 松田直子

仕事の仕組み

桃ぶどうなど生産する、JAなどを通してデパートなどに出荷される
出荷できるのは全体の4割程度
規格外の桃は親戚にあげたり地元へ行商することもある(これは、桃がもったいないから)

年間スケジュール

1月  桃・ぶどうの温室の土の堆肥搬入、中耕。ぶどう剪定
2月  マスカット(ぶどう)の加温準備。ボイラー点検(整備・清掃)
3月  マスカットの房の手入れ
4月  マスカットのまびき作業
5月  コールマン(ぶどう)のまびき作業
6月  各種ぶどうに予防薬散布(7~10日間隔で、2~3ヶ月間実施)
7-8月  桃とマスカットの収穫と出荷
9-10月  冷室マスカットの収穫と出荷
11-12月  コールマンの収穫と出荷

初期投資
星4つ
手間
星4つ
ギャンブル度
星3つ
難易度
星4つ

VOL.4 喜びや楽しみ、そして苦労と

2008.12.09 Tue
清水白桃誕生は昭和七年。 −伯父の場合、言い方が悪いかもしれないが、ハコはもともとあったわけで、とてつもなく大きな熱意や野望を持って農業を始めたわけではない。この仕事の喜びや楽しみというのは、いったいどのあたりにあるのだろうか

「...楽しみなあ...。農業っていう仕事それ自体の楽しみっていうのはなあ...。あるような、ないような...ようわからんもんじゃわ」

−「ようわからん」...やってない人間から見ると、自然の中で季節を感じながら仕事ができる、とか、空を見る回数が増えた、とかいう答えを期待してしまうのだけれど。

「そうなあ、そりゃもちろんそうじゃけど、生活もかかっとるし、ずっとやっとったら、そんなこと言ってられんようなことも多いからなあ。生き物を扱っとるわけじゃから。24時間、365日、目が離せんもん。...まあでも、朝早う起きて、一年一生懸命やって、いくら大変でも、ほんまにおいしいのができたら自己満足できるような世界はある」

−...なんだか少し哲学的である。俗世間の汚れとともに落ちたのか、サラリーマン時代に蓄えたお腹の脂肪もすっかり落ちている。健康的になったのは、農作業の効用なのでは?

「いや、それはなあ、」と、伯父、苦笑。
「努力したんよ」

−努力?・・・まさか、わざわざダイエットしたとか?
「そう。もう体重かったら動けんもん。じゃから一生懸命減らしたわ。動いてやせたんじゃなくて、食事制限の結果」

−農業やってやせたんじゃなくて、農業やるためにやせた。う〜ん、全然知らなかった事実、判明。本気でやろうと思ったら、カラダ作りも重要なのだった。しかし、確かに果物も生き物。喜びもあるけれど、苦労もやはり、山とある。
「天気や虫や台風や...そういう天災みたいなもんには勝てんわのう。対応の遅れで全部だめになったりする」

−そういったことに伴う労力や気苦労は、やはり大きい。費用の問題もある。この地区に果樹農家は約100軒あるのだが、その7割以上が、70歳以上だという。高齢化もかなり進んでいる。

岡山はぶどうの産地でもある。入江さんはマスカットも育てている。 高齢化と跡継ぎ問題

「5年ほど前、台風でぶどうの温室がむちゃくちゃに壊れた。そのとき、年寄り5,6人一気にやめてしもうた。自分は70過ぎて、跡継ぎもおらん、そしたら、いくらまだやりとうても、今から一千万円かけて新しい温室作ろうとは思えんじゃろ。こっちも、まだ頑張れとは、よう言わん」

−さらに、第二話でも出た「栽培管理日誌」。これまたやっかいなシロモノだ。見るからに面倒くさそうなこの日誌、消費者の安全を約束してくれるものでもあるのだが、実は、この辺りの高齢者が離農する原因の一つにもなっているという。

「それがなあ、ほら、薬名は全部横文字じゃろ。で、倍率や配合も全部違うから、70歳以上の高齢者になると、こんなもん、絶対自分では覚えとけんし、書けん。で、若い人に頼まんといけんようになる。私自身ここ3、4年で10人以上から頼まれたしなあ。頼める人がおらんかったら日誌が提出できん、提出できんかったら荷受してもらえん。で、離農してしまう人もたくさんおるくらいじゃから」

栽培管理日誌。使った農薬の名前、希釈倍率などを記録して農協に提出しなければ出荷できない。 −こんな薄っぺらなノート一冊のために!と思ってしまうけれど、当人たちにとっては、離農に揺れる気持ちを後押しする、大きな要素となってしまうのだろう。

跡継ぎさえいれば、彼らも心ゆくまで働けるのだ。そういう高齢者と、農業をやりたいけれどツテがない若者とをつなぐ、「農家養子」みたいなシステムがあったらいいのにな〜...と夢想してしまう。


しかし、実際に農業を志す若者も、少しずつではあるが、増えてきているようだ。この辺りの果樹農家の場合、新しく始めようと思ったら、どんなルートがあるのだろうか。

「私の場合、家業をそのまま継いだから、そのへんの苦労はなかった。じゃけど、決まったルートいうのは、ないわなあ。まずは、自分で土地を購入するか、借りるかする。高齢者が次々離農しとるから、今は、その土地を見つけて購入するチャンスじゃと思う。JAに相談して、地元の農業委員なんかを紹介してもらう。それで、遊休地を確保する。まずは資本、金がないとどうにもならんけど、JAで低利の融資もしてもらえるしな」

−岡山駅から車で15分(とてもそうは思えないほど、自然豊かなのだが...)。高速道路のインターにも、岡山空港にもほど近い。

便利な場所ゆえ、清水白桃を生み出す特別な土の山だって、ちょっと目を離した隙に、新しい住宅分譲地に...なんてことになりかねない。実際、辺りには、新しい住宅地や道路がずいぶんと増えた。(皆さん、桃作り始めるなら今のうちですよ〜!)

仕事を始めるにあたって。大変なことと、大切なこと

−ハード面の苦労はなかったにしても、ほとんど全くの素人だ。実際に仕事を始めると、やはり大変なことは多かったという。

「農業の勉強しとらんから、まず言葉がわからん。言葉が難しいから、専門誌読んでも、最初の1、2年は全然わからんかった。そういう専門用語の辞書はないからなあ。それから、資材の名前がわからん。出荷するときの、箱とか小物とか、全部にちゃんとした名前があるんじゃけど、それがわからんから、さっと注文できん。

実際始めるまでは、まさか言葉がわからんでこんなに困るとは思ってもみんかったわなあ。まあでも、うちはありがたいことに両親が一緒にやっとるから、どんな問題でもある程度は解決できる。経験っていうのがほんまに一番大切じゃな」

−自然が相手の商売だ。栽培法は確立されているとは言え、まったく同じ状況は二度と巡ってこない。いつ未知の状況に出会うかもしれない。そんなときにどう対応していくか。経験がものを言う世界である。

「新しく始めても、やっぱり一人じゃあ何もできんと思う。まずは経験者と一緒に、勉強させてもらわんとわからん。やっていく上で、集団があると、情報交換ができる。農家っていうのは、ある程度自由な時間が作れるから。ちょっと空いた時間にお茶飲みながらでええし、定期的なミーティングをしていくことが重要じゃと思う。まあ世間話みたいなもんでもええんじゃ。

箱詰めにいそしむ伯父、入江竜令氏 今までは、皆なかなか個人情報を表に出したがらんかった。たとえば、薬の配合とか使い方とか。マニュアルには書いとらんようなコツとかもっと効果的なやり方とかあっても、自分とこだけで囲い込んで、教えたがらんかった。でもそれはマイナスじゃと思う。最近は変わりつつあるかな。同じ悩みを持っとんじゃわ、皆。話し合いの場を設けて、情報の共有をしていくことが大切だし、そうすることで、自分自身の励みにもなっとる。

まあ...仲間作りが大切いうことじゃな。自力だけじゃ絶対できん。他力本願ばっかりでもあかんけど、他力っていうのはほんまに重要だし、ありがたいもんじゃ。他力本願に自力が加わって初めて、なんとかできるっていう気持ちでおらにゃ」

‐一年に2、3回、農業試験官や普及センターの専門家など、専門の講師を招き、研究会も行っているそうだ。内と外、双方からの情報収集と協力が大切なのだ。儲けばかりを考えた利己的なやり方では、結局のところ長く続かないのだろう。

「そうなあ。作る楽しみが儲ける楽しみになったらあかんわ。商売人になってしもうたら、もったいないから作った商品の試食もせん。農家っていうのは、商売人でもあるけど、まずは生産者じゃ。そのバランスが大切なんじゃろうな」

地元かつ親戚だけに今回詳しく聞いてみて新しい発見の連続!いつも食べていた桃のことがわかって、これから食べるのもまた違った見方ができそうです!

松田直子さん

取材したライター:

松田直子

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今週のZファーマー

Zファーマーとは、自分で考え、工夫や発明を重ねて、クリエイティブな農業を営む農家のことです。

川部正巳さん

A.がっぽり型

川部正巳さん

滋賀県米原市

占いの人に聞いたら、土か火に関係する仕事が向いてるよって言われたんです。火といえば、消防士でしょ。でも、応募年齢過ぎててあかんかった(笑)。陶芸家、花火師、造園業とかいろいろ考えて、美味しいもの食べるの好きやし、農業がいいかなって思ったんですよね。

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